BNCT
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BNCTってなに?
BNCTとは
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、エネルギーの低い中性子とがん細胞・組織に集積するホウ素化合の反応を利用して、がん細胞をピンポイントで破壊する、身体への負担が少ない最先端の放射線がん治療法です。
中性子は、原子核を構成する粒子の1つです。BNCTでは、中性子の工ネルギーを小さくして体への影響を少なくして使用しています。
BNCTの特長
身体にやさしい治療法
ホウ素と中性子の反応で発生する放射線は、飛ぶ距離が細胞1つ分程度と短いものです。
正常な細胞への影響を極力仰えつつ、がん細胞だけを破壊します。
そのため、正常な臓器には傷をつけず、生活の質を維持したままの治療が可能です。
治療が難しいがんにも効果的
理論上、ホウ素を取り込んだがん細胞だけを破壊できるため、外科手術や他の放射線治療が難しいがん(がん細胞と正常細胞が混在する脳腫瘍)などにも効果的です。
1~2回の照射で完了
BNCTでは、正常細胞への影響が少ないため、1回に大量の中性子を照射することができます。そのため、治療は1〜2回の照射で完了します(X線治療等は20回〜30回の照射が基本です)。
緩和ケアとしても有効
X線治療等に比べて短期間でがん細胞を破壊することが期待できます。そのため、がん細胞が体の痛みの原因となっている場合の緩和ケアとしても有効です。
BNCTは最先端の放射線がん治療法の1つです。
ホウ素に中性子を当てると、細胞1つ分程度の距離しか飛ばない粒子(アルファ線とリチウム粒子)が発生します。
この原理を利用して、ホウ素をがん細胞にできるだけ選択的に取り込ませてがん細胞を破壊します。
BNCTを受けるとどうなる?
BNCTは、正常細胞への影響が少なく、がん細胞だけを破壊します。
下の写真は、BNCTでがん(耳下線がん)を治療した実例です。
治療の仕組み
治療手順
南東北BNCT研究センターの加速器BNCTシステムでは、まず、がん治療専用の円形加速器サイクロトロンで、陽子をエネルギー30MeV(=3千万エレクトロンボルト)、光の速さの25%近くまで加速します。
加速された陽子ビームは、輸送装置を電磁石によって中性子照射装置(治療部)まで運ばれます。
次に、陽子ビームを中性子照射装置でベリリウムターゲットに衝突させ、中性子を発生させます。
得られた中性子を、モデレーターで治療に最適な(熱・熱外領域の)エネルギーまで減速させ、患部に照射します。
患者さんには事前にホウ素化合物を点滴によって投与します。代謝が活発ながん細胞は積極的にどんどんホウ素化合物を取り込んでいきます。
そこにさきほどの中性子線を照射することで、ホウ素の核分裂を誘発します。核分裂により、細胞1個を破壊するエネルギーが発生します。そして、ホウ素化合物を取り込んだ細胞が選択的に破壊されます。
ホウ素をたくさん取り込んだがん細胞では細胞内部でホウ素と熱中性子の核反応が生じ、核反応により発生したアルファ線と7Li粒子ががん細胞を殺します。
アルファ線も7Li粒子もおよそ10ミクロン(細胞1個分)しか飛ばないため、周りの正常な細胞を傷つけることなくがん細胞が選択的に治療できます。
① がん細胞に取り込まれやすいホウ素薬剤を投与
② 中性子とホウ素が反応
③がん細胞を破壊
④細胞単位で治療が可能
一部の代謝が活溌な正常細胞にもホウ素が取り込まれるため、正常組織にもダメージを生じますが、その影響は正常組織の一部に限られ他の放射線治療とくらべて小さいため、今までに治療できなかった浸潤・再発がんや難治性がんに有効であると考えられています。
南東北BNCT研究センター BNCTによる治療解説動画
治療の流れ
当センターでは、これまで本邦の原子炉で実施されてきた治療方法をベースに、ホウ素中性子捕捉療法の効能を最大限に高める高品質な治療を提供します。
治療日前の検討
腫瘍にホウ素製剤が取り込まれることを確認するために、治療当日までに、創薬サイクロトロン研究センターにおいてFBPA-PET/CT検査を受けていただきます。
(取り込みの程度によっては治療の予定が一旦キャンセルとなることもあります。)
担当医が最新のCTやMRIを用いて腫瘍の位置や性状に合わせた最適な治療プランを立てます。
再度病院を受診いただき、治療台の上で治療プランをもとにして治療の姿勢をとってもらい、最適な治療姿勢を決定します。
治療の姿勢が決まったら、姿勢を固定するためのプラスチックのマスクを作製し、マスクに固定された状態でCTを撮影します。
CTをもとに担当医が本番のための治療プランを立てます。
治療当日
簡単な診察を行います。
点滴や尿道カテーテルを装着し、ホウ素製剤の点滴を開始します。
※ホウ素製剤は抗がん剤や他の医薬品と比べて、薬そのものによる副作用の頻度はとても低くなっております。ただし、体質によっては、かゆみ、吐き気、血圧低下などといった症状が出ることもあります。
点滴開始から1時間ほど経ったところで、ベッドから治療台に移動し、治療の姿勢を再現しマスクで固定されます。
点滴開始より2時間を前に照射室に移動します。治療室において採血をしたのち、治療が開始されます。
※治療中は音楽を聴きながら、治療室の外にいるスタッフと会話することもできます。
治療はおよそ1時間以内に終了となります。
治療後は副作用への加療や経過観察のため、およそ1週間入院となります。